
ヘドロとアカエイだらけのホーム河川はわざわざ通うほどのものじゃなく、限られた地元の人々が嗜む領域。
子供の頃からこの川でテナガエビを掬い、潮干狩りをし、ハゼを釣ってきた。お祖父さんや父親との思い出も濃いこの川はある意味、原点だ。
河口から支流まで魚を追い求めて、早朝も深夜も駆けまわっていたのだが、スイートスポットは家から徒歩10秒にあった。
灯台下暗しとはこのことだろう。

夏頃から夕マヅメの短時間、チヌが高活性を迎えるようで、そこに良い潮回りと水位が重なるとバイトが多発する。
比較的大きな河川のため水位が高いと魚が散ってしまうが、干潮だと水深30cmを切るため護岸側のシャローに定位するようだ。
水深が浅ければトップも出るが、やはりボトムに軍配が上がる。ハードボトムに近いため、根がかりしないフリーリグが最適である。

夕マヅメだけ仕事終わりに何日か通ってみたが再現性がある。派手なバイトは少ないが、ハゼのようなアタリの中で、どこかにチヌが食んでいるタイミングがある。
そこから明確なバイトにつながるわけではないが、穂先とラインの動きをイカメタルのように注視して一瞬の喰いこみに合わせると化物みたいな重量級のチヌが暴れだす。

正直、フリーリグは好きな釣りではなかった。好きな方には恐縮だが、ボトムをズル引きして掛ける釣りが自分には物足らないと感じていた。
しかし、風や流れを考慮してメンディングし、数ある小さなアタリを嗅ぎ分けて掛けていくのはなかなかに面白い。手法や技法はある程度限られるとも、細かな変化をもとに修正を重ねていくこの釣りは『繊細』なのだ。
片道40分で浜名湖に行ける立地は誰もが羨むだろう。さらに徒歩10秒で年無しチヌが取れてしまうという体験が出来るオマケ付きだ。
恵まれた環境である。
これで釣りをしないのは失礼にあたるだろう。
fin.

zune.