
秋の訪れにしびれを切らし、よなよな地元河川を彷徨い歩いている。
ーーーその姿はさながら亡霊。
家庭と仕事に挟まれ、満身創痍で望む姿は傍からみたら異常である。
簡単に釣れない河川で、ましてやオカッパリで、しかも自分の都合の時間帯で、シーバスが振り向いてくれるとは思えない。

しかし、新たなルアーを手にしながら、ああしたら、こうしたらと考える時間が愉しく、日々のストレスをそこで帳消しにしている。
もはや釣りに行かなくても、釣り場に行くだけでも、竿を降るだけでも愉しいのだ。
こんなに釣りに無邪気な自分を他人はどう思うだろうか。いささか変人の領域は抜け出しはしないだろうが、その情熱を羨ましく思ってくれるだろうか。
次こそは。と意気込む釣行が続いているが、もはやこのまま釣れないほうが自分にとって良い気さえしている。
いや、もちろん釣れてくれたら嬉しい。ただ、あっけなく何匹も釣れるようなことはあって欲しくない。途端に冷めてしまうようなことがあっては、私の心の中の少年は行き場を失ってしまう。
ーーー次こそは。
タイドグラフと嫁の顔を見比べる。
いいぞ、どちらも大潮上げ止まりだ!
ルアーをボックスいっぱいに敷き詰めて飛び出していくその姿はとても輝いている。
どうしようもなく、恥ずかし気もなく。

増え過ぎたピカピカのルアー達。

zune.